副業で案件を受けているエンジニアの中で、「頑張っているのに時給が上がらない」と悩んでいる人は少なくない。Xでも「案件が取れない」「単価が上がらない」という声をよく見かける。
僕自身、副業を始めた1年目は時給5,000円からスタートした。そこから約4年かけて時給12,000円まで引き上げたが、振り返ると交渉テクニックで上がったのは最初の1回だけで、残りはすべて「構造」を変えたことで自然に単価が上がっていった。
月単価のレートで言うと、時給5,000円×月40時間=月20万円が、時給12,000円×月40時間=月48万円になる。同じ稼働時間で2.4倍。この差は「構造設計」で生まれる。
なぜ「交渉力」では単価が上がらないのか
多くの人が単価交渉のテクニック——言い回しやタイミング——に注目するが、僕の経験では、構造が変わっていない状態で交渉しても上がり幅は時給500〜1,000円が限界だった。
理由はシンプルで、クライアントから見た「あなたに頼む理由」が変わっていないからだ。同じ作業を同じレベルで提供している限り、発注側に値上げを受け入れるロジックがない。
副業の継続率は、単価に不満を持つ人ほど低い傾向がある。単価が上がらないまま消耗して辞めていくパターンを何人も見てきた。だからこそ、構造から変える必要がある。
単価設計3ステップ
ステップ1:「作業者ポジション」から「提案者ポジション」へ移行する
時給5,000円前後で止まっている人の多くは、「指示されたことを実装する」ポジションにいる。これは構造的に単価が上がりにくい。
僕が最初にやったのは、受けた案件の中で「こうした方がいいのでは」という提案を月1回すること。コードレビューで気づいたパフォーマンス改善案、ユーザー体験を向上させるUI変更の提案など、小さなことでいい。
3ヶ月ほど続けると、クライアント側の認知が「作業をお願いする人」から「相談できる人」に変わる。この認知の変化が起きた段階で、時給を7,000〜8,000円に上げる交渉が通りやすくなる。
ステップ2:「時間売り」から「成果物売り」への転換を一部に取り入れる
時給制のまま単価を青天井に上げるのは難しい。僕は既存の時給案件を維持しつつ、一部を「機能単位の固定報酬」に切り替えた。
例えば「この機能の設計から実装まで一式15万円」という形。実際にかかる工数が12時間なら、実質時給12,500円になる。クライアントにとっても予算が読みやすいメリットがある。
独立の損益分岐は、この「成果物売り」の比率が全体の50%を超えたあたりで見えてきた。僕の場合は副業時代に成果物売りを30%まで引き上げてから独立に踏み切った。
ステップ3:「継続案件の単価見直しサイクル」を仕組み化する
僕は3ヶ月に1回、全案件の「営業時間あたり時給」を計算している。具体的にはこうだ:
- 案件ごとの3ヶ月平均月商を算出
- 実稼働時間(MTG・調査・コミュニケーション含む)で割る
- 実質時給が7,000円を下回っている案件は、単価改定を打診するか撤退する
この計算を習慣化したのは副業2年目からだが、数字で現実を見ることで「なんとなく続けている低単価案件」を手放す決断ができるようになった。手放した枠に、ステップ1・2で培った信頼をベースにした高単価案件を入れていく。これが構造的に単価を上げるサイクルだ。
実践例:朝5時〜7時の集中ブロックで「提案」を仕込む
僕が副業時代に実践していたのは、朝5時〜7時の集中作業ブロックで「提案の種」を仕込むことだった。この時間帯はSlackの通知も来ないし、純粋にコードと向き合える。
具体的には、前日の作業で気づいた改善点をNotionにメモし、朝ブロックで「改善提案のプルリクエスト+説明コメント」を作る。夜22時〜24時のコミュニケーションブロックでクライアントに共有する。
この習慣を6ヶ月続けた結果、3つの継続案件すべてで単価改定の打診が通った。ポイントは「交渉する」のではなく、「上げざるを得ない実績を積み上げる」構造を作ったこと。
単価が上がらない人の3つの共通パターン
- 1案件に依存している:交渉力がゼロになる。最低2案件を並行して持ち、断れる状態を作る
- 時給計算をしていない:MTGや調整時間を含めると実質時給3,000円台だったケースもある
- 「忙しい」を成果と混同している:稼働時間が多い=価値が高い、ではない
FAQ
Q1. 副業を始めたばかりでも単価交渉はできますか?
開始直後の交渉は難しい。まず3ヶ月は実績を積み、クライアントからの信頼を獲得してから打診するのが現実的。僕も最初の単価改定は副業開始8ヶ月目だった。
Q2. 単価を上げたらクライアントに切られませんか?
ステップ1で「提案者ポジション」を確立していれば、切られるリスクは低い。仮に断られても、その単価で受けてくれる別のクライアントを探す方が中長期で得をする。
Q3. 成果物売りに切り替えるとき、工数見積もりのコツは?
過去の類似作業の実績時間×1.3倍を基準にしている。バッファ30%は調査・修正・コミュニケーションコスト。慣れると見積もり精度は上がる。
Q4. 副業で時給12,000円は現実的ですか?
TypeScript/React/Next.jsなどモダンフロントエンド〜フルスタック領域で実務経験5年以上あれば、成果物売りを組み合わせて実現可能な水準。ただし全案件で即達成ではなく、ポートフォリオ全体の平均で見るべき。
Q5. 単価交渉のメール例文はありますか?
例文に頼る交渉は上がり幅が小さい。それよりも「直近3ヶ月でこういう成果を出しました。次の四半期からはこの範囲もカバーできます」という事実ベースの提案が最も効果的。
まとめ
副業の単価が上がらない原因は、交渉テクニックの不足ではなく、構造の問題であることが多い。作業者→提案者へのポジション移行、時間売り→成果物売りの部分導入、3ヶ月ごとの時給計算サイクル——この3つを回すことで、単価は交渉しなくても上がっていく。
大事なのは「数字で判断すること」。営業時間あたり時給が見えていれば、どの案件を伸ばし、どの案件を手放すべきかの意思決定が明確になる。


