転職エージェントに登録して面談を受けたものの、「この担当者、なんか合わないな」と感じている人は少なくない。
マイナビの2026年調査では、転職エージェントを利用した人のうち担当者への不満を感じた理由の第1位が「人柄やコミュニケーションスタイルが合わない」だった。次いで「紹介される求人が希望と合わない」「応募や内定承諾を無理に勧められた」が続く。
しかし、多くの人が「担当変更を申し出たら気まずくなるのでは」と遠慮して、合わないまま活動を続けるか、黙って退会してしまう。これは構造的に損をしている。
エージェント側の事情を明かすと、担当変更の依頼は日常的に発生しており、エージェント会社にとっては「退会されるより担当を変えて継続してもらうほうがありがたい」のが本音だ。私自身、8年間で担当変更を受けた側になったことも、変更先として引き継いだこともある。どちらの経験からも言えることがある——変更そのものはマイナスにならないが、変更の仕方で転職活動の質が大きく変わる。
担当者が「合わない」と感じる3つの構造的原因
「合わない」の正体を分類しておこう。原因によって取るべきアクションが違う。
1. 専門性のミスマッチ
あなたが希望する業界・職種に対して、担当者の知識や経験が足りないケース。たとえばIT業界への転職を希望しているのに、担当者が小売・流通の案件しか扱った経験がない場合、求人の選び方も面接対策のアドバイスも的外れになりやすい。
これは担当者の人間性の問題ではなく、配属の構造問題だ。大手エージェントでは登録時の情報をもとに自動振り分けされることが多く、あなたの希望が正確に反映されていない可能性がある。
2. コミュニケーションスタイルの不一致
連絡頻度が多すぎる(または少なすぎる)、メール派なのに電話ばかりかけてくる、回答を急かされると感じる——こうした不一致は、担当者が悪いわけでも、あなたがわがままなわけでもない。スタイルの相性だ。
ただし注意が必要なのは、エージェントの連絡頻度には構造的な理由があること。求人には応募期限があり、企業側の選考スピードに合わせて動く必要がある。「連絡が多い」と感じる場合、まず「なぜこの頻度なのか」を聞いてみることで解決するケースもある。
3. 利益相反の疑い
希望していない求人を強く勧められる、年収を下げた求人ばかり紹介される、内定承諾を異常に急かされる。こうした行動の背景には、エージェントの報酬構造が関係していることがある。
エージェントの報酬は候補者の決定年収の30〜35%が相場で、これは候補者の年収アップと基本的に利害が一致する。しかし一方で、内定辞退リスクを回避するために「確実に決まる案件」を優先したり、月のKPIを達成するために決定を急ぐインセンティブも存在する。この構造的ズレを感じたら、担当変更ではなくエージェント自体の変更を検討すべきだ。
担当変更を依頼する3つの方法と実践ポイント
原因が「専門性のミスマッチ」か「コミュニケーションスタイルの不一致」であれば、担当変更で解決できる。正しい方法を整理する。
方法1: 問い合わせフォーム経由(最もスムーズ)
大手エージェントには問い合わせフォームやカスタマーサポート窓口があり、ここから依頼するのが最も角が立たない。担当者本人に直接伝える必要がなく、管理部門が仲介するため心理的負担が少ない。
ポイントは「不満」ではなく「要望」として書くこと。「担当者の対応が悪い」ではなく「希望業界に詳しい方にサポートいただきたい」と書くだけで、対応スピードが変わる。
方法2: メールで依頼する
フォームがない場合や、中小エージェントの場合はメールが有効。以下のような構成で書くといい。
件名:担当キャリアアドバイザー変更のご相談
○○エージェント ご担当者様
いつもお世話になっております。△△です。
現在の転職活動を進める中で、希望している○○業界についてより専門的なアドバイスをいただきたいと考えております。
大変恐縮ではございますが、該当分野にお詳しい担当者様への変更をご検討いただけますと幸いです。
引き続き貴社のサービスを活用させていただきたく、何卒よろしくお願いいたします。
感情的な表現は避け、「サービスを継続利用したい意思」を明示するのがコツだ。エージェント側からすると「退会予備軍」より「変更してでも続けたい人」のほうが優先度が上がる。
方法3: 電話で直接伝える
急ぎの場合や、すでに選考が進んでいて引き継ぎをスムーズにしたい場合は電話もあり。ただし、担当者本人ではなくカスタマーサポートや代表番号に連絡するのが原則だ。
変更後に差がつく3つの行動
担当変更はゴールではなくスタートだ。ここからの動き方で転職活動の質が決まる。朝の市場分析で得たデータを午前の面談に活かすのが私の日課だが、候補者側にも「新しい担当者を最大限活用するための準備」が必要だ。
行動1: 初回面談で「過去の不満」ではなく「今の希望」を伝える
新しい担当者に前任者の悪口を言う人がいるが、これは逆効果。担当者は社内の同僚であり、ネガティブな情報は「この候補者は要注意」というフラグにもなりかねない。
伝えるべきは「希望条件の優先順位」「転職の期限」「前回の活動で得た気づき」の3つ。これだけで新しい担当者は的確な求人を出しやすくなる。
行動2: 自分の市場価値を数字で共有する
市場のレートで言うと、あなたの経験・スキルがいくらで評価されるかを担当者と認識合わせすることが重要だ。「年収○○万円を希望」と言うだけでなく、「現年収○○万円、他社で○○万円のオファーを受けた経験がある」「類似ポジションの求人レンジが○○〜○○万円であることは把握している」と伝えると、担当者の動き方がまるで変わる。
以前支援した候補者で、年収700万のシニアエンジニアが転職を希望したケースがある。市場を見たら1300万は狙える材料があったが、本人は1000万が上限だと思い込んでいた。新しい担当者との初回面談で市場データを共有し、最終的に1300万で決着した。担当者が変わるタイミングは、自分の市場価値を再定義する最良の機会でもある。
行動3: レスポンス速度を上げる
エージェント側の事情を明かすと、担当者は常に複数の候補者を同時に抱えており、内部では候補者をA〜Cランクでトリアージしている。レスポンスが速い候補者は「意欲が高い=決定しやすい」と判断され、Aランク対応を受けやすい。
具体的には、求人紹介への返信は24時間以内、面接日程の調整は当日中を目安にするだけで、紹介される求人の質と量が変わる。
担当変更すべきでない3つのケース
最後に、変更が逆効果になるパターンも整理しておく。
- 1回目の面談だけで判断する場合:初回は双方が探り合いの段階。最低2回の面談を経てから判断すべき
- 不満の原因が自分の準備不足の場合:職務経歴書が未完成、希望条件が曖昧な状態では、誰が担当しても同じ結果になる
- 選考が最終段階にある場合:最終面接や内定直前での担当変更は引き継ぎロスが大きく、選考に悪影響を及ぼすリスクがある
よくある質問(FAQ)
Q1. 担当変更を依頼したら、エージェント内での自分の評価は下がりますか?
下がらない。エージェント内部の候補者評価は「転職意欲」「市場価値」「レスポンス速度」で決まる。担当変更の依頼自体はマイナス評価にはならない。むしろ、合わないまま活動が停滞するほうが「意欲低下」と判断されるリスクがある。
Q2. 変更後の担当者も合わなかった場合はどうすべきですか?
2回目の変更依頼は問題ないが、3回以上になるとエージェント側の対応リソースが限界になる。2回目でも合わなければ、そのエージェント自体との相性を疑い、別のエージェントをメインに切り替えることを推奨する。「総合型1社+特化型1社」の2社体制が最も効率がいい。
Q3. 担当変更の依頼から新しい担当者が決まるまで、どのくらいかかりますか?
大手エージェントの場合、通常3〜5営業日で新しい担当者が決まり、初回面談の案内が届く。中小エージェントでは1週間以上かかることもある。選考中の案件がある場合は、その旨を変更依頼時に明記しておくと引き継ぎが優先される。
Q4. 担当者本人に直接「変更してほしい」と伝えるのはNGですか?
NGではないが、推奨しない。担当者本人に伝えると「何が悪かったのか」の説明を求められることがあり、余計な気まずさが生まれる。問い合わせフォームやカスタマーサポート経由で依頼するのが、双方にとって最もスムーズ。
まとめ
転職エージェントの担当変更は、遠慮すべきことではなく、転職活動を構造的に最適化するための正当なアクションだ。
重要なのは「変更すること」よりも「変更後の動き方」。希望条件の優先順位を整理し、自分の市場価値を数字で共有し、レスポンス速度を上げる。この3つを実行すれば、新しい担当者との関係は確実に良いスタートを切れる。
転職活動の成否は、エージェントの「当たり外れ」ではなく、エージェントの「使い方」で決まる。合わないと感じたら構造的に対処し、自分の転職活動を前に進めてほしい。
参考文献
- マイナビ転職動向調査 2026年版(2025年実績) — 正社員の転職率7.6%(過去最高)
- オリコン顧客満足度調査 転職エージェントランキング 2026年 — 担当者対応満足度の評価基準
- マイナビエージェント「担当変更をする方法」 — 大手エージェントの公式FAQ
- studio-tale 転職エージェント利用アンケート 2026年 — 利用者の49%がエージェント経由で転職




