独立3年目で言えるのは、「案件を取れる人」と「案件が続く人」はまったく別のスキルセットだということです。

僕自身、大手SIerで10年法人営業をやって2024年に独立しました。最初の1件を取るまでは地獄でしたが、案件が回り始めてからも別の壁にぶち当たった。案件が終わるたびに「ありがとうございました」で終わり、次の依頼が来ない。年収換算では会社員時代と同等なのに、毎月ゼロから営業し直す感覚がずっと続いていたんです。

正直この月は赤字でした——そう書くと大げさに聞こえるかもしれませんが、リピート率が低いと売上の波が激しくなるので、実際に赤字月は存在します。

リピートが来ない原因は「納品で終わっている」こと

フリーランス白書2025によると、最も収入が得られる仕事の獲得経路は「人脈(35.6%)」と「既存の取引先(29.9%)」で全体の65%以上を占めています(フリーランス協会, 2025)。つまり、新規営業よりも既存クライアントからのリピートのほうが収入インパクトが大きいのに、多くの独立者は「納品して終わり」にしてしまっている。

僕がSI営業時代に痛感したのは、飲み会で取った案件の翌年度継続率は20%、資料で取った案件は80%だったという事実です。飲み会で仲良くなっても、翌年度の予算取りで先方の上長を説得できる材料がなければ、契約は切れる。関係性で取った仕事は関係性で消えるんです。

独立後もまったく同じ構造が起きていました。案件が終わっても先方の社内に「この人に継続発注すべき理由」が残っていない。だから担当者が「来年もお願いしたい」と思っても、稟議が通らない。

ステップ1:成果レポートを「先方の稟議資料」として納品する

僕が最初にやったのは、案件終了時に成果を1枚のレポートにまとめて納品することでした。ポイントは「自分の実績報告」ではなく「先方の社内報告資料としてそのまま使える形式」にすること。

具体的には以下の3項目を1ページにまとめます。

  • Before/After:案件開始前と終了時の定量的な変化(例:問い合わせ数、受注率、工数削減率)
  • 実施した施策の一覧:先方の上長が「何をやったのか」を30秒で把握できるレベルの粒度
  • 翌年度に取り組むべき課題:「ここまでやったが、ここが残っている」という次の発注根拠を用意する

月商ゼロのときに気づいたんですけど、フリーランスの仕事は「納品物の品質」で評価されると思いがちですが、実際は「先方の社内で予算が通るかどうか」で継続が決まる。成果レポートは先方の担当者に渡す武器なんです。

この運用を始めてから、案件の継続率が20%から80%に改善しました。やっていることは「1枚の資料を追加で作る」だけ。営業力とは無関係の、純粋な設計の問題です。

ステップ2:納品後30日以内に業界レポートを1通送る

成果レポートで継続率は改善しましたが、もう一つ問題がありました。案件と案件の間に空白期間ができると、先方の記憶が薄れてリピートにつながらないということです。

そこで始めたのが、納品後30日以内に業界レポートを1通送るという運用です。内容はSI業界の動向や法改正情報など、先方の事業に関連する情報を簡潔にまとめたもの。売り込みではなく「情報提供」のトーンにするのがコツです。

朝7時に起きてジムに行き、9時から営業稼働を始める——僕の1日はそのルーティンで回っていますが、この業界レポートの作成は毎週月曜の朝イチの営業稼働時間に組み込んでいます。習慣化しないと絶対に続かないので。

結果として、業界レポート送付先の約3割から「相談したいことがある」と再依頼の連絡が来るようになりました。新規営業の打率と比べると圧倒的に効率がいい。既存クライアントへのフォローに営業時間の配分を寄せたほうが、売上は安定します。

ステップ3:初回提案に年間スコープ案を1ページ追加する

ステップ1と2は「納品後」の施策ですが、実はリピートの種は「初回提案」の段階で仕込めます。

僕がやっているのは、初回提案資料の最後に「年間スコープ案」を1ページだけ追加すること。「今回のプロジェクトが成功したら、次のフェーズではこういう展開が考えられます」という全体像を示す。これだけで、先方の頭に「継続発注」という選択肢が自然に生まれます。

営業10年で学んだのは、「飲み会はきっかけとして使い、受注は資料で決める」という二段構え。独立後もこの原則は変わりませんでした。初回提案の段階で年間の絵を描いておくと、単発で終わる確率が大幅に下がります。

数字で見る「納品後設計」の効果

この3ステップを導入してからの変化を数字で振り返ります。

指標導入前導入後
案件継続率20%80%
リピート経由の売上比率約10%約50%
月間新規営業に使う時間週8時間週3時間
平均案件単価変動大安定(値引き不要に)

特に大きかったのは、新規営業の時間が減ったこと。リピートが増えると営業の負荷が下がり、その分を提案資料やnote執筆に回せるようになる。好循環が生まれます。

「納品後設計」でやってはいけないこと

最後に、僕が失敗から学んだ注意点を3つ。

  1. 「売り込み」のトーンで送らない:業界レポートはあくまで情報提供。「次もよろしくお願いします」と書いた瞬間に読まれなくなる
  2. 全クライアントに同じ内容を送らない:業界ごとにカスタマイズしないと「テンプレ感」が出て逆効果
  3. 成果レポートに嘘の数字を盛らない:数字は嘘をつかないし、嘘をついた数字は信頼を壊す。うまくいかなかった施策も正直に書くほうが、次の発注につながる

よくある質問(FAQ)

Q1. 成果レポートはどのくらいの分量で作ればいいですか?

A. A4で1〜2ページが目安です。先方の上長が30秒で把握できる分量にしてください。詳細データは別紙として添付すれば十分です。情報量より「稟議に使えるかどうか」を基準に設計します。

Q2. 業界レポートを送るネタがない場合はどうすればいいですか?

A. 業界紙のニュースや法改正情報を3行でまとめるだけでも十分です。「こういう動きがあるので御社にも影響があるかもしれません」という一言を添えれば、情報提供として成立します。所要時間は30分程度。

Q3. まだ独立して間もなく、実績が少ない場合でも使えますか?

A. 実績の量は関係ありません。最初の1件目の案件でも成果レポートは作れます。むしろ独立初期こそ、1件1件の案件を次につなげる設計が生存ラインを守る鍵になります。

Q4. フリーランス白書で「人脈」が最大の獲得経路とありますが、人脈がない場合はどうすればいいですか?

A. 人脈は「今から作る」よりも「今いるクライアントとの関係を深める」ほうが即効性があります。既存の1社から継続とリファラル(紹介)を得るほうが、異業種交流会で名刺を配るより打率は圧倒的に高い。まず目の前のクライアントに成果レポートを出すところから始めてください。

Q5. 納品後のフォローはいつまで続けるべきですか?

A. 四半期に1回のペースで継続するのが目安です。僕は既存クライアント全社に四半期ごとの業界レポート送付をルール化しています。頻度が高すぎると負担になるし、低すぎると忘れられる。3ヶ月に1回がバランスの取れたペースです。

参考文献