副業を始めてしばらく経つと、多くの人がぶつかる壁がある。「今月は15万円稼げたのに、来月はほぼゼロ」——この収入の波だ。

フリーランス白書2025によると、フリーランスの仕事獲得経路の上位は「人脈」「過去・現在の取引先」で占められている。裏を返せば、新規案件を毎月ゼロから探している人ほど収入が不安定になる構造がある。

僕自身、副業を始めた最初の8ヶ月間は完全にこの「単発ループ」にハマっていた。案件が終わるたびにクラウドソーシングを巡回し、提案文を書き、採用されるまで収入ゼロの期間が続く。副業の継続率は、実はこの初期フェーズで大半が決まる。

この記事では、僕が副業の月商を50万円まで伸ばす過程で設計した「収入の波を平準化する3つの仕組み」を、具体的な数字とともに解説する。

副業の収入がバラつく3つの構造的原因

収入が安定しない原因を「営業力不足」で片付ける人が多いが、実際は構造の問題であることがほとんどだ。

原因1:単発案件の比率が高すぎる

副業開始から8ヶ月間、僕の継続案件比率は10%以下だった。毎月新しいクライアントを探す「狩猟型」の働き方では、案件の谷間に必ず収入ゼロの期間が発生する。

月単価のレートで言うと、単発案件は見かけの時給が高くても「案件を探す時間」を含めた実質時給は大幅に下がる。たとえば時給5,000円の案件でも、10時間の営業活動を含めると実質時給は3,500円程度まで落ちる。

原因2:納品が「終わり」になっている

多くの副業ワーカーは、納品したらクライアントとの関係もそこで終わる。しかし、クライアント側には「次に改善したい点」が必ずある。その接点を作らないまま去ってしまうのは、継続案件の芽を自分で摘んでいるのと同じだ。

原因3:収入の波を数字で把握していない

「なんとなく不安定」という感覚だけで動いていると、対策の打ちようがない。月商・経費・実質時給を毎月記録していなければ、どの案件が収入安定に貢献しているのか判断できない。

収入の波を平準化する3つの仕組み

仕組み1:継続案件比率50%以上を目標に案件ポートフォリオを設計する

最初に取り組んだのは、案件の「ポートフォリオ」を意識することだ。投資でいう分散投資と同じ考え方で、単発案件と継続案件の比率を数字で管理する。

具体的には、3ヶ月ごとに以下の3つの数値を計算する。

  • 継続案件比率(継続案件の売上 ÷ 全体売上 × 100)
  • 営業時間あたり時給(月商 ÷ 営業+稼働の合計時間)
  • クライアント集中度(売上1位のクライアントが全体に占める割合)

僕の場合、まず継続案件比率50%を中間目標に設定した。50%を超えると「来月の最低売上」が見える状態になり、精神的な安定度が大きく変わる。最終的には2年かけて継続案件比率70%を達成した。

同時に、クライアント集中度は50%以下に抑えることを意識した。1社に依存すると、その1社の予算カットで一気に収入が消えるリスクがある。理想は「3社以上の継続クライアント」で、1社が離脱しても月商の3分の2は維持できる状態だ。

仕組み2:納品時に「改善提案メモ」を添える習慣で単発→継続に変換する

継続案件を増やすために、特別な営業スキルは必要なかった。僕がやったのは納品時にNotion1ページの改善提案メモを添えるだけだ。

メモの内容はシンプルで、3項目に絞っている。

  1. 技術的負債:今回の実装で将来課題になりそうな点
  2. 次フェーズの改善提案:ユーザー体験やパフォーマンスの改善案
  3. 概算工数と期待効果:提案を実行した場合の見積もり

朝5時〜7時の集中ブロックで改善提案のPRを仕込み、夜22時〜24時のコミュニケーション用ブロックでクライアントに共有する。副業時代はこの朝夜2ブロック制を6ヶ月以上続けた。

この習慣を導入した結果、改善提案からの継続率は約60%になった。提案を出さなければ0%だったものが60%になるわけで、30分〜1時間の工数で数十万円の継続案件につながるROIの高い習慣だと実感している。

ポイントは、提案を「営業」と思わないことだ。クライアントのプロダクトを良くするための技術的なアドバイスとして書く。作業者ではなく提案者としてのポジションを確立すると、単価交渉も通りやすくなる。

仕組み3:月末10分の「収支チェック」で波を数値化し、低リピート案件を手放す

3つ目の仕組みは、月末に10分だけ時間を取って収支を振り返ることだ。

Excelで管理している項目は以下の通り。

  • クライアント別の月商
  • 稼働時間(営業時間を含む)
  • 営業時間あたり時給(税引き後)
  • 継続案件比率の推移

このデータを3ヶ月単位で見ると、「この案件は時給が低いのにリピートもない」というパターンが見えてくる。そうした低リピート案件を手放し、既存クライアントへの提案に時間を振り向けた結果、全体の月商はむしろ上がった。

副業の収入が安定しないとき、多くの人は「もっと案件を増やさなきゃ」と考える。しかし実際には、案件を「選ぶ」ことで収入が安定する。3ヶ月平均の月商で判断すれば、感情に左右されずに案件の入れ替えができる。

実践ロードマップ:最初の3ヶ月でやること

すべてを一度に始める必要はない。以下の順序で取り組めば、3ヶ月で収入の波は明らかに小さくなる。

1ヶ月目:現状を数字で把握する

まず過去3ヶ月の収支を振り返り、継続案件比率・営業時間あたり時給・クライアント集中度を算出する。「思ったより低い」と感じるはずだが、数字が見えた時点で改善の出発点に立てている。

2ヶ月目:納品時の改善提案メモを始める

次の納品から、改善提案メモを1件添えてみる。最初は3項目すべてを埋めなくてもいい。「次フェーズの改善提案」だけでも十分だ。30分あれば書ける。

3ヶ月目:案件ポートフォリオを見直す

1〜2ヶ月のデータが溜まったら、低リピート・低時給の案件を1つ手放し、浮いた時間を既存クライアントへの提案に使う。ここで継続案件比率の改善が始まる。

よくある質問(FAQ)

Q1. 継続案件がゼロの状態から始めても効果はありますか?

ある。僕自身、継続案件比率10%以下からスタートした。改善提案メモを導入するだけで、2〜3ヶ月後には少なくとも1件の継続案件が生まれる可能性が高い。提案からの継続率が約60%なので、5件納品すれば3件は継続の打診につながる計算だ。

Q2. エンジニア以外の職種でも改善提案メモは使えますか?

使える。Webライターなら「次に書くべきテーマの提案」、デザイナーなら「ABテスト用の別デザイン案」など、職種に合わせて「次の仕事の種」を提案すればいい。要は「納品して終わり」にしないことが本質だ。

Q3. 低リピート案件を手放すのが怖いのですが……

怖いと感じるのは、感覚で判断しているからだ。3ヶ月平均の月商と営業時間あたり時給を計算すれば、手放すべき案件は数字が教えてくれる。実際に手放した結果、僕の場合は既存クライアントへの提案時間が増え、全体の月商が上がった。

Q4. 副業の継続案件比率はどのくらいを目標にすべき?

まずは50%を目指す。50%を超えると「来月の最低売上」が見えるため、精神的な安定度が段違いに変わる。僕は最終的に70%まで上げたが、80%以上にすると新規の技術チャレンジが減るリスクもある。70%前後がバランスとしてはちょうどいい。

Q5. 月末の収支チェックはどのツールでやればいいですか?

Excelやスプレッドシートで十分だ。高機能な会計ソフトは不要で、クライアント別の売上・稼働時間・実質時給の3列があればいい。僕は副業時代からExcelで月次収支ダッシュボードを作る習慣を続けていて、独立後もそのまま使っている。

まとめ

副業の収入が月によって大きく変動するのは、営業力の問題ではなく構造の問題だ。継続案件比率を数字で管理し、納品後の改善提案で継続の種を蒔き、月末10分の収支チェックで低リピート案件を手放す。この3つの仕組みを回せば、収入の波は確実に小さくなる。

独立の損益分岐は、この「波の小ささ」にかかっている。副業のうちに収入を平準化できれば、独立後の安定経営にもそのまま活きる。まずは今月の月末に10分だけ時間を取って、自分の継続案件比率を計算するところから始めてみてほしい。

参考文献