独立3年目で言えるのは、「仕事の質が高い=リピートが来る」は幻想やった、ということです。

僕は大手SIerで10年間、法人営業をやってました。独立して最初の半年、ありがたいことに少しずつ案件は取れるようになったんですけど、ほぼ全部が単発で終わる。「ありがとうございました」で終了。次の連絡は来ない。

正直この月は赤字でした。案件は来るのに安定しない。毎月ゼロからの営業が必要で、精神的にはむしろ案件ゼロの頃より辛かった。

結論から言うと、リピートが来なかった原因は「仕事の質」じゃなく「納品物の設計」でした。この記事では、僕が継続発注率を20%から80%に改善した3つの設計原則を、数字と失敗込みで書きます。

なぜ「いい仕事」をしてもリピートが来ないのか

まず前提として、リピートが来ない=仕事がダメだった、とは限りません。

僕がSI営業時代に痛感したのは、「飲み会で取れる仕事」と「資料で取れる仕事」の継続率の違いです。飲み会きっかけで取った案件の翌年度継続率は20%。資料勝負で取った案件は80%でした。

なぜこんな差が出るのか。理由はシンプルで、飲み会で取った案件は「担当者の好意」で発注されているから。担当者が異動したら終わり。予算会議で「なぜこの外注が必要か」を説明する資料がない。

独立後も同じ構造でした。僕の仕事に満足してくれていても、先方の社内で「来年もこの人に頼む理由」を説明できる材料がなければ、継続は起きない。

つまり、リピートが来ない原因の多くは、先方の社内稟議に使える資料が残っていないことだったんです。

継続発注率を変えた3つの納品設計

原則1:案件終了時に「成果レポート」を1枚つける

これが最も効果が大きかった施策です。

やったことはシンプルで、案件が終わったときに成果を1枚のレポートにまとめて納品物に含めるようにしました。ポイントは「先方の社内報告資料としてそのまま使える形式」にすること。

具体的には以下の構成です:

  • 課題:依頼時に先方が抱えていた課題(先方の言葉をそのまま使う)
  • 施策:こちらが実施した内容(箇条書き3〜5項目)
  • 成果:数字で示せるものは全て数字にする
  • 今後の推奨アクション:次にやるべきことを2〜3項目

A4で1枚、多くても2枚。先方の担当者が上司に「この外注に頼んだ結果こうなりました」と説明するとき、そのままコピペできる粒度にするのがコツです。

月商ゼロのときに気づいたんですけど、フリーランスの多くは「作業の完了」を納品だと思っている。でも先方にとっての納品は「社内で説明できる成果物」なんです。

原則2:初回提案に「年間スコープ案」を1ページ追加する

これは意外と見落とされがちですが、最初の提案書に「もし年間で取り組むならこういうスコープになります」という1ページを足すだけで、継続の可能性が大きく変わります。

なぜか。人間は選択肢がないと「今回で終わり」がデフォルトになるからです。年間スコープ案があると、先方の頭に「継続という選択肢」が生まれる。意思決定のテーブルに載るかどうかが変わるんです。

僕の場合、年間スコープ案には以下を入れています:

  • Q1〜Q4でやること(概要レベルでOK)
  • 想定される成果指標
  • 概算の費用感(松竹梅の3パターン)

「押し売りにならないか?」と心配する人もいますが、あくまで「ご参考として」のトーンで添えるだけ。先方から「年間で頼みたいんだけど」と言ってくるケースが増えました。

原則3:納品後30日以内に「業界レポート」を1通送る

案件が終わった後、多くのフリーランスは「次の依頼が来るのを待つ」モードに入ります。僕もそうでした。

でも、待っている間に先方の記憶は薄れていく。納品後30日以内に、先方の業界に関する情報を1通メールで送るようにしたら、そこから再依頼の相談が来るようになりました。

ここで重要なのは、「お仕事ありませんか?」という売り込みではなく、「この情報、御社に関係あるかもと思いまして」という情報提供のトーンにすること。

僕は前職がSI業界なので、IT系の業界動向や法改正の情報をまとめて送っています。作成時間は30分程度。これを既存クライアントの全社に四半期ごとに送る運用にしています。

朝7時に起きてジムに行って、9時から営業稼働を始めるんですが、この業界レポートの作成は月曜の朝イチにやるようにしています。新規営業より既存フォローのほうが打率が高いので、週の最初にやるべき仕事として定着しました。

3つの原則を実践した結果

この3つを導入して、数字はこう変わりました:

  • 案件継続率:20% → 80%
  • 年間契約ベースの売上比率:0% → 約50%
  • 新規営業に割く時間:月の60% → 月の25%

継続案件が増えると、新規営業に追われなくなる。新規営業に追われなくなると、条件の良い案件を選べるようになる。結果的に平均単価も上がるという好循環が生まれました。

「関係性で取った仕事は関係性で消える」

SI営業10年で学んだ最大の教訓は、「関係性で取った仕事は関係性で消える。資料で取った仕事は構造で残る」ということです。

独立すると、どうしても「人脈」や「関係性」に頼りがちです。もちろん信頼関係は大事。でも、その信頼を「先方の社内で再現可能な形」に変換しないと、担当者の異動や予算の見直しであっさり切られます。

成果レポートも年間スコープ案も業界レポートも、やっていることは全て「自分の価値を先方の社内言語に翻訳する作業」です。

独立3年目で言えるのは、納品設計は営業力じゃなくて設計力やということ。スキルを磨くのと同じくらい、「納品した後に何が残るか」を設計する時間を取ってほしいと思います。

よくある質問(FAQ)

Q1. 成果レポートを作る時間がもったいなく感じます。本当に効果がありますか?

A. 僕の場合、成果レポートの作成にかかる時間は1件あたり30分〜1時間です。一方、新規案件を1件獲得するための営業時間は平均10時間以上。継続率が20%→80%に上がった結果、年間で100時間以上の営業時間を削減できました。投資対効果で見れば、最もコスパの良い営業活動です。

Q2. コンサル系ではなく、制作系(デザインや開発)でも使えますか?

A. 使えます。制作系の場合、成果レポートには「改善前後のビフォーアフター」「アクセス数やCVRの変化」「ユーザーからのフィードバック」などを入れます。先方が社内で「この外注に頼んだ成果」を説明できる材料になれば、形式は問いません。

Q3. 年間スコープ案を出したら「安く年間契約にされる」リスクはありませんか?

A. あります。だから松竹梅の3パターンで出すのがポイントです。最低ラインは自分の生存ラインから逆算して設定し、本命プランを真ん中に配置する。3プラン提示のアンカリング効果で、真ん中のプランが選ばれやすくなります。僕はこの手法で平均単価を維持したまま年間契約化に成功しました。

Q4. 業界レポートを送るのは「押し売り」に感じられませんか?

A. 売り込みのトーンにしなければ大丈夫です。「独立のお知らせ」を送ったときと同じで、報告・情報提供のトーンにすると、相手は応援モードに入りやすい。実際、僕が四半期レポートを送っている先からは「いつも助かります」という返信が多く、そこから「ちょっと相談したいことがあるんですが」と案件につながるケースが3割ほどあります。

Q5. 継続率が上がると新規開拓のモチベーションが下がりませんか?

A. 逆です。継続案件でベース売上が安定すると、新規は「取らなければ死ぬ」ではなく「良い案件だけ選ぶ」モードになれます。僕は営業チャネルを自走(note経由)・仕込み(既存横展開)・保険(エージェント)の3層に分散していますが、継続率が上がったことで仕込みチャネルの比率が自然と高まり、全体の安定感が増しました。

参考文献