GW明けの月曜日、電車に乗りながら「もう辞めたい」と思ったことがある人は少なくないだろう。マイナビが2026年に正社員2万人を対象に実施した調査では、五月病を経験したことがある人は18.5%、そのうち39.9%が「五月病が原因で転職を考えたことがある」と回答している。

採用側の論理で言うと、この数字自体は驚くべきものではない。問題は「辞めたい」と感じた人のうち、本当に動くべき人と、1週間待てば元に戻る人が混在していることだ。退職面談1000件を担当してきた経験から言えば、両者には明確な構造的違いがある。

連休明けに「辞めたい」は異常ではない

まず前提として、連休明けの憂鬱感は生理的に正常な反応である。マイナビの同調査では「連休が長いと仕事復帰が大変でモチベーションが下がる」と回答した人が37.1%で、「連休が長い方がモチベーションが上がる」の33.0%を上回っている。

仕事復帰が大変だと感じる連休日数の平均は10.2日。2026年のGW平均休暇日数は5.8日だが、有給を組み合わせて10日以上の大型連休にした人も8.3%いる。休みが長ければ長いほど、復帰のハードルは上がる。これは怠けではなく、生活リズムの再適応コストだ。

人事部の評価会議では、GW明けに有給を追加で取る社員がいても、それだけで評価を下げることはない。問題視されるのは、連休明けの行動パターンが「一時的な揺れ」ではなく「構造的な離脱サイン」に変わった場合だ。

退職面談1000件で見えた「本当に辞める人」の3つの判別基準

退職面談で「いつ頃から辞めたいと思っていましたか」と聞くと、連休明けに退職を決意した人には共通のパターンがある。以下の3つの基準のうち2つ以上が該当する場合、それは一時的な五月病ではなく、構造的なミスマッチのサインだ。

判別基準①:「辞めたい理由」が連休前から存在していたか

一時的な五月病の場合、「辞めたい」の理由は「休みが終わるのが嫌」「通勤が面倒」といった状況依存型になる。1週間もすれば元の生活リズムに戻り、感情は薄れる。

一方、本当に辞める人の退職面談では、こう語られることが多い。

「連休中に考えたわけじゃないんです。4月からずっと感じていたことが、休みで体力が回復したら急にはっきり見えたんです」

退職面談で本当に言われるのは、連休が「新しい不満を生んだ」のではなく、「既にあった不満を直視する余裕をくれた」ということだ。自分に問うべきは「GW前の金曜日、仕事に何を感じていたか」である。連休前から感じていた違和感があるなら、それは休み明けの気分ではない。

判別基準②:「日曜夜の空白感」が連休前から常態化していたか

五月病は基本的に「連休明け限定」の現象だ。しかし退職面談で話を聞くと、最終的に退職した人の多くは、連休前から毎週日曜の夜に「明日からまた始まる」という空白感を抱えていた。

朝6時に起きてヨガをしながら頭を整理する習慣がある私でも、日曜夜に翌週のことを考えて気が重くなることはある。それ自体は正常だ。しかし「気が重い」と「何も感じない」は違う。空白感——つまり嫌でも楽しみでもなく、ただ虚無がある状態——が3週間以上続いていた場合、それは連休とは無関係の慢性的な職場適応不全だ。

退職面談の現場で使っていた確認の問いがある。「GW前の4月、日曜の夜に翌週を楽しみに感じた瞬間は1回でもありましたか?」ゼロだった人は、五月病ではなく職場そのものとの接続が切れている。

判別基準③:「誰にも言っていない」状態が3ヶ月以上か

退職面談で聞くと、連休明けに衝動的に辞める人と、計画的に辞める人の最大の違いは「誰かに話していたかどうか」だ。

衝動退職者の8割は、辞めたいという気持ちを誰にも——上司はもちろん、同僚にも家族にも——言語化したことがなかった。内側に溜め続けた不満が、連休という「考える時間」をきっかけに爆発する。このパターンの退職は後悔率が高い。

逆に、連休前から配偶者や信頼できる同僚に「最近こう感じている」と話していた人は、連休中にそれを整理し、連休明けに「やはり動こう」と判断する。人事部の評価会議では、こうした計画的離職者の退職理由は合理的であることが多く、引き止めが成功するケースはほぼない。

自分に問うべきは「この気持ちを、連休前に誰かに言葉にしたことがあるか」だ。答えがNoなら、辞める前にまず1人でいいから話すことを勧める。

「辞めたい」が一時的かどうかを見極める実践3ステップ

ステップ1:2週間ルールを適用する

GW明けに「辞めたい」と思ったら、まず2週間だけ判断を保留する。退職面談1000件の知見から言えば、純粋な五月病は2週間で軽減する。2週間後の金曜日にもう一度「辞めたいか」を自分に聞く。答えがYesなら、次のステップに進む。

ステップ2:「取りに行くもの」を1つ言語化する

「辞めたい」だけでは動けない。動くなら「次に何を取りに行くか」を1文で言えるようにする。「逃げたい」は動機として弱い。採用側の論理で言うと、面接で「前職の何が嫌だったか」しか語れない候補者は評価が低い。連休中に考えるべきは「嫌なこと」ではなく「次に欲しいもの」だ。

ステップ3:1人だけに「辞めたいと思っている」と伝える

上司でなくていい。配偶者、友人、元同僚、誰でもいい。言語化することで「衝動」が「意思」に変わる。退職面談で後悔を語る人の共通点は「誰にも言わずに決めた」こと。逆に、言語化した上で動いた人は、たとえ転職先が完璧でなくても「自分で決めた」納得感を持っている。

人事が本当に心配しているのは「五月病」ではない

最後に一つ補足しておきたい。人事が連休明けに本当に心配しているのは、五月病のように目に見える不調ではない。2025年のGW明けには、ある退職代行サービスが1日で250件以上の依頼を受けたと報道されている。人事にとって怖いのは、予兆なく突然いなくなる社員だ。

五月病で1週間休む社員は、実はそこまで心配していない。回復するからだ。本当に怖いのは、GW前まで普通に仕事をしていた人が、連休明けに退職代行経由で「本日付で退職します」と通知してくるケースだ。これは本人だけの問題ではなく、組織の心理的安全性の設計不足に起因する。

「辞めたい」と思うこと自体は、5人に1人が経験する正常な反応だ。それを甘えだと切り捨てる必要はない。ただし、甘えと正常反応の区別がつかないまま衝動で動くのは、キャリアにとってリスクが高い。3つの判別基準で自分の状態を構造的に把握した上で、動くなら計画的に動いてほしい。

よくある質問(FAQ)

Q1. GW明けに有給を使って休むのは評価に響きますか?

人事部の評価会議では、有給取得自体がマイナス評価になることはない。ただし、連休明けの月曜に当日欠勤を繰り返すパターンは「勤怠の安定性」の項目で認識される。事前申請の有給と当日欠勤は、人事の見え方がまったく異なる。

Q2. 五月病と本当のうつ病の違いはどう見極めればいいですか?

五月病は環境適応の一時的な不調で、2〜4週間で軽減することが多い。2週間以上「楽しいと感じることが何もない」「睡眠が連日崩れている」「食欲が完全に消えた」が続く場合は、五月病ではなく医療の対象である可能性が高い。迷ったら産業医への相談を推奨する。

Q3. 転職活動は在職中に始めるべきですか、辞めてからですか?

退職面談1000件の知見から言えば、辞めてから探す人の方が焦りで条件を妥協しやすい。在職中にエージェント登録と求人閲覧だけでも始めておくことで、「辞めたい」が「辞めるべきか」の冷静な判断に変わる。マイナビの2026年調査では五月病経験者の20.9%が実際に転職しているが、計画的に動いた人の方が満足度は高い。

Q4. 上司に「辞めたい」と伝えるタイミングはいつがベストですか?

GW明け直後は避けた方がいい。感情が安定する2週間後以降に、1on1の場で「キャリアについて相談したい」という切り出し方がベスト。「辞めます」と宣言する前に「迷っている」と相談する段階を挟むことで、引き止め交渉も含めた選択肢が広がる。

参考文献

  • マイナビ「【正社員2万人に聞いた】GW休暇と五月病に関する調査2026年」(2026年4月23日公開)
  • 日本テレビ「連休明け初日、退職代行に依頼250件以上」(2025年5月7日報道)
  • 厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」メンタルヘルス対策の実施状況