独立3年目で言えるのは、「稼働が止まったら収入もゼロになる」という恐怖は、独立している限り完全には消えないということです。
会社員のときは、インフルエンザで1週間寝込んでも給料が出ました。有給もあるし、傷病手当金もある。でも独立した瞬間、その安全網は全部なくなります。
正直この月は赤字でした——と note に書いたことが何度かありますが、その原因が「体調不良で2週間営業できなかった」だったこともあります。独立2年目、夏に胃腸炎で10日間ほぼ動けなかった。その月の売上は前月の3分の1。ベース層の月額顧問があったから生活はなんとかなりましたが、スポット案件は全部リスケか失注でした。
「稼働ゼロ=収入ゼロ」は独立の構造的リスク
これは根性論や自己管理の話ではなくて、独立という働き方に組み込まれた構造的なリスクです。会社員には健康保険の傷病手当金(標準報酬月額の3分の2、最長1年6ヶ月)がありますが、国民健康保険にはこの制度がありません。つまり、個人事業主は1日休んだ瞬間から公的な所得補償がゼロです。
フリーランス実態調査でも「働けなくなるリスクへの不安」は常に上位に入ります。でも、多くの人は「まあ健康だから大丈夫」と先送りにする。僕もそうでした。
僕が構築した「稼働停止リスク」を軽減する3つの備え
月商ゼロのときに気づいたんですけど、独立の不安って「数字がわからない不安」と「仕組みがない不安」の2種類があるんです。稼働停止リスクに関しては、後者——つまり仕組みで対処できます。
備え①:就業不能保険+所得補償保険の「二本立て」
まず知っておくべきなのは、「就業不能保険」と「所得補償保険」は別物だということ。
- 所得補償保険(損害保険系):短期の休業(数週間〜数ヶ月)をカバー。免責期間7日程度、月額報酬の50〜70%が補償される。日新火災やあいおいニッセイなどが取り扱い
- 就業不能保険(生命保険系):長期の就業不能(60日以上)をカバー。精神疾患も対象になる商品が増えている。ライフネット生命やSBI生命など
僕は所得補償保険(免責7日、月額15万円補償)と就業不能保険(免責60日、月額20万円)を組み合わせています。合計の保険料は月額約7,000円。生存ライン(月25万円)をカバーできる設計にしました。
ポイントは、保険金額を「理想の収入」ではなく「生存ライン」に合わせること。保険料を抑えつつ、最低限の生活は守れます。
備え②:ベース層売上で「寝てても入る収入」を確保
保険はあくまでも最後の砦です。もっと現実的な防御は、稼働ゼロでも入ってくる売上を持っておくこと。
僕の場合、月額顧問契約2社(計12万円)がベース層になっています。これは僕が倒れても即座に止まるわけではなく、月末の請求で翌月に入金されます。つまり、最低でも1ヶ月分の猶予がある。
スポット案件だけで食べていると、体調を崩した月にいきなり収入がゼロになります。でもベース層があれば「今月休んでも来月の家賃は払える」という状態を維持できる。売上の3層構造(ベース層・ミドル層・スポット層)を設計したのは収入の波を均すためでしたが、稼働停止リスクに対しても最大の防御になっています。
備え③:「稼働停止プロトコル」をあらかじめ決めておく
実は一番効いたのがこれです。体調を崩してから「どうしよう」と考えるのでは遅い。元気なうちに「倒れたときの手順書」を作っておく。
僕が Excel に書いている稼働停止プロトコルはこんな内容です:
- 発動条件:連続3日以上稼働不能と判断した時点
- 初動(24時間以内):進行中クライアント全員にリスケ連絡。テンプレートはGmailの下書きに常備
- 48時間以内:翌月の売上影響をExcelで試算。生存ライン(月25万円)を割るかどうか判定
- 1週間経過:所得補償保険の請求手続き開始。免責期間を確認して就業不能保険の申請準備
- 復帰時:クライアントにお詫び+今後のスケジュール再提案。失った信頼を取り戻す営業アクション
朝7時にジムに行くルーティンも、正直に言うと「健康が趣味」なわけではなく、独立後のリスク管理として意識的に始めたものです。SI営業時代は接待と残業で年に1回は大きく体調を崩していた。独立してからは「体が資本」が文字通りの意味になるので、朝ジムを欠かさないようにしています。
2024年11月からフリーランスも労災保険に特別加入できるようになった
大きな制度変更として知っておくべきなのが、2024年11月1日から全てのフリーランスが労災保険に特別加入できるようになったこと。これまでは特定の業種(建設業や運送業など)に限られていましたが、フリーランス新法の施行に合わせて業種横断で加入可能になりました。
労災保険の特別加入で補償されるのは、仕事中や通勤中のケガ・病気・障害・死亡です。給付基礎日額を自分で選べるので、3,500円〜25,000円の範囲で設定できます。保険料は年間で数万円程度。
フリーランス協会が「フリーランス労災保険組合」を設立して加入受付を行っています。僕もこの制度開始と同時に加入しました。所得補償保険とカバー範囲が異なる(労災は業務上の事故・疾病、所得補償保険は業務外も含む)ので、併用がベストです。
「備えがある」という事実がメンタルを安定させる
独立3年目で言えるのは、実際にこれらの備えを「使った」ことより、「備えがある」と知っていること自体がメンタル安定に効いているということ。安心ダッシュボードに「生活防衛資金残月数」と「保険でカバーされる月額」を並べてあるのも、朝10秒で「大丈夫」と確認するためです。
独立の不安の半分は「誰にも言えない」から生まれる、と以前書きましたが、もう半分は「仕組みがない」から生まれます。稼働停止リスクへの備えは、後者を潰すための具体策です。
FAQ
Q1. 就業不能保険と所得補償保険、どちらか一つだけ入るならどっち?
短期の体調不良(1〜2週間)のリスクが高い人は所得補償保険を優先。長期のリスク(精神疾患や大病)が心配なら就業不能保険を。僕のおすすめは両方入る二本立てですが、予算が限られるなら所得補償保険を先に。フリーランスは短期の休業が直接売上に響くので。
Q2. フリーランス協会の所得補償制度は入った方がいい?
年会費1万円で所得補償保険が最大32%割引になるので、コスパは良いです。ただし補償内容をよく確認すること。協会経由の保険は上限額や免責期間が市販の個別商品と異なる場合があります。僕は協会に加入しつつ、足りない分を個別の保険で補完しています。
Q3. 生活防衛資金はどれくらい持っておくべき?
僕は生存ライン(月25万円)×6ヶ月=150万円を最低ラインにしています。保険の免責期間(7日〜60日)を生活防衛資金でつなぐイメージです。独立直後はまず3ヶ月分を確保して、余裕ができたら6ヶ月分に伸ばすのが現実的。
Q4. 確定申告で保険料は経費になる?
事業用の所得補償保険は「保険料」として経費計上できます。一方、就業不能保険(生命保険系)は「生命保険料控除」の対象になりますが、控除額の上限は年間4万円(新制度)。経費と控除の違いを理解して、税務上のメリットも考慮して商品選びをしましょう。
Q5. 労災保険の特別加入と就業不能保険は両方必要?
カバー範囲が違うので、併用をおすすめします。労災保険は「業務上の」事故や疾病が対象。プライベートの病気やケガは対象外です。就業不能保険は業務内外を問わず補償されるので、両方持っておくと穴がなくなります。
まとめ
独立して稼働が止まるリスクは、気合いや健康管理だけでは防げません。構造的なリスクには構造的な備えが必要です。
- 就業不能保険+所得補償保険の二本立てで公的保障の穴を埋める
- ベース層売上で「寝ていても入る収入」を確保する
- 稼働停止プロトコルを元気なうちに設計しておく
数字は嘘をつかない。備えがあるかどうかは、倒れる前に決まっています。






