独立2年目の6月、税務署から届いた通知書に書かれた金額を見て「え、これ今月払うの?」と焦った経験がある人は少なくないと思う。
僕自身、独立1年目は住民税と国保の時差請求で月9万円近い社保負担を経験していたから、ある程度の覚悟はあった。でも予定納税の通知は想定外だった。前年の確定申告で払った所得税の3分の1を、7月と11月に「前払い」しろという制度。月単価のレートで言うと、僕の場合は1回あたり15万円超——つまり月商の約25%が、稼ぐ前に出ていく計算だった。
予定納税とは何か——「前払い」の仕組みを数字で理解する
予定納税は、前年分の所得税・復興特別所得税の確定申告額(予定納税基準額)が15万円以上の個人事業主に対して、その年の所得税を事前に分割納付させる制度だ。
計算はシンプルで、予定納税基準額の3分の1ずつを2回に分けて納める。
- 第1期:7月1日〜7月31日
- 第2期:11月1日〜11月30日
たとえば前年の確定申告で所得税が45万円だった場合、予定納税は各期15万円ずつ。年間で30万円を前払いし、残りは翌年3月の確定申告で精算する。前払い分が多すぎれば還付される仕組みだ。
通知書は6月中旬に届く。届いた時点で第1期の納付まであと1ヶ月半。ここで「聞いてない」と焦るのが、独立1〜2年目のあるあるパターンだ。
予定納税の対象になる人・ならない人
ポイントは「前年の所得税が15万円以上かどうか」だけだ。
- 会社員から独立した1年目 → 前年は給与所得のみで年末調整済み → 対象外のケースが多い
- 独立2年目 → 1年目の確定申告で所得税15万円超 → 対象になりやすい
- 副業の所得が大きい会社員 → 確定申告の税額が15万円超 → 対象
僕の場合、独立1年目は月商60万円で年間売上は約700万円。青色申告65万円控除を適用しても所得税は15万円を余裕で超えていたから、2年目の6月に予定納税の通知が届いた。
7月15日が勝負——減額申請の判断フロー
予定納税の金額は「前年の実績ベース」で自動計算される。でも今年の売上が前年より減っている場合、前年ベースの金額をそのまま払うのはキャッシュフロー的にきつい。
そこで使えるのが予定納税の減額申請だ。
減額申請が使える条件
- 今年の売上が前年より大幅に減少している
- 医療費控除や扶養控除などが新たに発生する
- 事業転換や災害で経費が急増した
- 退職・廃業で事業所得が途中からなくなった
提出期限と手順
- 第1期・第2期の減額申請:7月1日〜7月15日までに提出
- 第2期のみの減額申請:11月1日〜11月15日までに提出
提出方法は3つ。e-Tax(推奨)、郵送、税務署窓口。e-Taxなら15分で完了する。
必要なもの
- 予定納税額の減額申請書(国税庁サイトからダウンロード or e-Taxで作成)
- 申告納税見積額の計算書(今年の売上・経費・所得の見込みを記載)
- 売上台帳や試算表などの参考資料
ここで重要なのが、6月30日時点の売上・経費をベースに見積もるということ。僕は月末10分の5指標チェックで毎月の売上・経費・税引き後手残りを記録しているから、6月30日時点の数字はExcelを開けばすぐに出せた。月次の数字管理をしていない人は、この段階で半年分の売上を一気に集計する羽目になる。
予定納税の資金プール設計——3ヶ月平均月商の15%を毎月積む
減額申請が通るケースはいいとして、問題は「前年と同等以上に稼いでいるが予定納税の資金が手元にない」パターンだ。独立の損益分岐は月商だけでなく、こうした税金の前払いまで織り込んで初めて正確になる。
僕がやったのは、毎月の売上から所得税の前払い分を先に別口座にプールする仕組みだ。
資金プールの計算式
月次プール額 = 3ヶ月平均月商 × 経費率を除いた所得率 × 概算税率 × 1/12
たとえば3ヶ月平均月商60万円、経費率30%、概算税率(所得税+復興税)20%なら:
60万 × 0.7 × 0.2 ÷ 12 ≒ 月7,000円——ではなく、年間で計算すると60万 × 12ヶ月 × 0.7 × 0.2 = 約100万円の所得税が見込まれ、予定納税はその3分の2(約67万円)。月あたり約5.6万円をプールしておく必要がある。
僕は簡易的に「3ヶ月平均月商の10〜15%を納税プール口座に毎月移す」というルールで運用している。副業専用口座を独立時に分離していたから、そこに予定納税プール用の目的別口座を追加しただけだ。
予定納税を払いすぎた場合——確定申告で還付される
予定納税はあくまで「前払い」なので、確定申告で実際の税額と精算される。前払いのほうが多ければ差額は還付される。還付加算金(利息のようなもの)もつく。
ただし還付されるのは翌年の確定申告後。つまりキャッシュが戻るまで半年〜1年のタイムラグがある。「どうせ返ってくるから」と油断すると、その期間の運転資金が足りなくなる。これが予定納税の本質的な怖さだ。
予定納税を延滞するとどうなるか
納付期限を過ぎると延滞税が発生する。令和8年(2026年)の延滞税率は、納期限の翌日から2ヶ月以内が年2.4%、2ヶ月超が年8.7%(特例基準割合による)。15万円の予定納税を3ヶ月延滞すると約2,600円の延滞税がかかる計算だ。
金額としては小さく見えるが、延滞の記録が残ること自体がリスク。将来の融資審査や信用に影響する可能性がある。
まとめ——予定納税は「知っていれば怖くない」制度
予定納税で焦る人の大半は、制度の存在を知らないか、資金の準備ができていないかのどちらかだ。僕の場合は独立1年目に住民税・国保の時差請求で月9万円の衝撃を受けた経験があったから、2年目以降は「届く前に準備する」を徹底した。
具体的にやることは3つだけ。
- 6月中旬:通知書が届いたら金額を確認し、月末チェックのExcelに納付期限と金額を追加
- 7月1日〜15日:今年の売上が前年より減っていれば減額申請をe-Taxで提出
- 毎月:3ヶ月平均月商の10〜15%を納税プール口座に自動移動
予定納税は攻略対象ではなく、理解して備えるだけの制度だ。月末10分のチェックルーティンに納税スケジュールを1行追加するだけで、7月に焦ることはなくなる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 予定納税の通知が届きましたが、届いた金額をそのまま払わないといけないですか?
原則はそのまま払います。ただし今年の所得が前年より大幅に減る見込みがある場合、7月15日までに減額申請を出せば納付額を下げられます。e-Taxで15分程度の手続きです。
Q2. 副業の所得でも予定納税は発生しますか?
はい。確定申告で納めた所得税額(予定納税基準額)が15万円以上であれば、給与所得者でも予定納税の対象になります。副業所得が大きい会社員は要注意です。
Q3. 予定納税を払い忘れたらどうなりますか?
納付期限の翌日から延滞税が発生します。2026年の延滞税率は2ヶ月以内で年2.4%、2ヶ月超で年8.7%です。延滞が続くと督促状が届き、最悪の場合は財産差押えの対象になります。
Q4. 予定納税の支払い方法は何がありますか?
振替納税(口座引落し)、e-Taxによるダイレクト納付、クレジットカード納付、コンビニ納付(QRコード)、金融機関の窓口納付の5つです。振替納税を設定しておくと払い忘れを防げます。
Q5. 予定納税で払いすぎた分はいつ戻ってきますか?
翌年の確定申告後に還付されます。通常は確定申告から1〜2ヶ月後に指定口座に振り込まれます。還付加算金(利息相当)も付くため、払いすぎ自体は損ではありませんが、キャッシュフローへの影響は計算に入れておきましょう。






