「適応障害かもしれない。休職したいが、誰に何をどの順番で言えばいいのか分からない」。退職面談でも、その手前の相談でも、この種の声をたびたび聞いてきました。結論から言うと、休職は気力の問題ではなく手順の問題です。人事が申請を処理する側の順番で整理します。

なお私は医師ではありません。診断や治療の判断はできないので、ここでは会社の規程と公的制度の側から、再現できる手順に絞って書きます。

休職は法律ではなく会社の規程で決まる

最初に押さえるべき前提があります。業務外の病気で仕事を休む「休職」は、法律で一律に期間や条件が決まっている制度ではありません。多くの会社が就業規則の休職規程で、対象者・期間・給与の扱い・復職の条件を定めています。

採用側の論理で言うと、休職は「会社が雇用を維持したまま、回復を待つ」ための制度です。したがって運用は会社ごとに違います。同じ診断書でも、休職期間が3か月の会社もあれば、勤続年数に応じて1年以上になる会社もあります。まず自社の規程を読むことが、すべての出発点になります。

最初に確認する4項目

  • 休職の対象になる条件(勤続年数の下限があるか)
  • 休職できる期間と、延長・通算のルール
  • 休職中の給与(無給とする会社が多い)
  • 復職の条件(主治医の診断書に加えて産業医面談があるか)

就業規則は、社内ポータルや人事部、労務担当に閲覧を求めれば見られます。見られない場合は、労働者に周知する義務が会社側にあるので、「休職規程を確認したい」と伝えれば足ります。理由まで詳しく話す必要はありません。

休職までの流れを時系列で整理する

  1. 心療内科・精神科を受診する
  2. 医師が休養を要すると判断した場合、診断書を発行してもらう
  3. 上司または人事に、診断書を添えて休職を申し出る
  4. 会社が休職規程に基づいて休職発令を行う
  5. 傷病手当金の申請準備を進める
  6. 休職中は定期的に通院し、会社との連絡方法を決める

1. 受診は「診断名を決めてもらう」場ではない

受診の目的は、現在の症状と就業の可否を医師に評価してもらうことです。診断名は医師が判断します。自分で「適応障害だから」と決めて伝えるより、いつから、どんな症状(眠れない、動悸、出勤前の吐き気など)があり、仕事のどの場面で強まるかをメモして持っていくと、医師に正確に伝わります。

2. 診断書には「休養を要する期間」を書いてもらう

会社が見るのは、診断名よりも「いつまで休養が必要か」という期間です。最初の診断書は1〜3か月程度とする例が多く、必要なら更新します。会社指定の様式がある場合もあるので、事前に人事へ確認しておくと二度手間になりません。

3. 申し出は「事実と希望」だけ伝える

人事部の評価会議では、休職者の発生は「状況把握」の対象であって、評価の話とは切り離して扱うのが通常です。ですから、申し出に自責や詫びを長く書く必要はありません。次の3点があれば足ります。

「医師から○月○日まで休養が必要との診断を受けました。診断書を添付します。休職規程に基づく手続きと、必要書類を教えてください。」

上司に直接言いにくいときは、先に人事へ連絡する方法もあります。会社によっては産業医や保健師の窓口があるので、そこから入るのも一つです。

お金の話:傷病手当金の基本

休職中の給与が無給になる会社では、健康保険の傷病手当金が生活を支える柱になります。全国健康保険協会(協会けんぽ)の案内で確認できる基本は次のとおりです。

項目内容
待期期間連続する3日間。4日目から支給対象
支給額の目安直近12か月の標準報酬月額の平均÷30×2/3(1日あたり)
支給期間支給開始日から通算して1年6か月(2022年1月の改正で通算化)

注意したいのは待期期間です。待期は「連続した3日」で成立し、途中に出勤日が挟まると成立しないと説明されています。休職前に出勤と欠勤を繰り返している人は、どの日が待期に数えられるかを、会社の担当者か加入先の健保に確認してください。

申請書には、本人記入欄、医師の記入欄、会社の記入欄(勤務状況・給与支払状況)があります。会社欄は人事や労務の担当者が書くので、休職の申し出と同時に「傷病手当金の申請書をお願いしたい」と伝えておくと、手続きが遅れにくくなります。金額や条件は加入している保険者(協会けんぽか健康保険組合か)で細部が異なる場合があるため、必ず自分の加入先の案内で確認してください。

休職中に続くお金の負担

休職中も、社会保険料や住民税の負担が発生する場合があります。会社への支払い方法(振込か、復職後の精算か)は会社によって違うので、休職発令の前に確認しておくと安心です。

人事が見ている「休職の通り方」

退職面談で本当に言われるのは、「もっと早く相談すればよかった」という言葉です。休職の相談が遅れ、症状が重くなってから申し出ると、回復にも復職の調整にも時間がかかります。会社側から見ても、早い段階で情報が入れば、業務の割り振りや配置転換といった選択肢を検討できます。

逆に、会社側が困るのは休職そのものより、「連絡が途絶える」「状況が全く分からない」ことです。休職中の連絡は、月1回など頻度と窓口(人事か上司か)を最初に決めておくと、お互いに消耗が減ります。

復職を見据えて、休職の最初にやっておくこと

厚生労働省は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」で、休業開始から復職後のフォローまでを5つのステップで示しています。主治医が復帰可能と判断しても、それが職場で求められる業務遂行能力の回復を意味するとは限らないため、産業医などが内容を確認することが重要だとされています。

実務上はこういう意味です。「診断書に復職可と書かれたから、その日から元どおり働ける」とは扱われにくい。段階的な勤務(短時間勤務や、試し出勤の制度がある会社ではそれ)を挟むことが少なくありません。休職の入り口で、復職の条件と流れを確認しておくと、復帰時に慌てずに済みます。

休職中の過ごし方

私自身、ヨガを20年続けてきて実感しているのは、休むことは「動かない練習」だということです。休職中は、焦って資格取得や転職活動を詰め込むより、睡眠と通院のリズムを整えることを優先するほうが、結果的に判断の質が戻ります。転職を考えるのは、医師から就業可能と言われてからでも遅くありません。

休職がかなわない・合わないと感じたとき

  • 休職規程の対象外(勤続年数不足など)の場合:有給休暇の利用、欠勤扱い、配置転換の相談など、会社に選択肢を確認する
  • 職場環境が原因で、戻る見込みがない場合:休職と並行して、退職や転職の選択肢を整理する
  • 会社が診断書を受け付けない場合:記録を残したうえで、労働局の総合労働相談コーナーなど社外の窓口に相談する

休職と退職は二択ではありません。休職で状態を落ち着かせてから、続けるか辞めるかを判断する人も多くいます。ただし、休職は問題を先送りするだけの手段ではなく、回復と判断のための時間として使うべきです。

よくある質問

Q1. 診断書があれば、会社は必ず休職を認めますか?

診断書は重要な根拠ですが、休職の可否や期間は就業規則の休職規程に基づいて会社が決めます。勤続年数などの要件を満たさない場合は、別の休み方を相談する形になります。まず規程を確認してください。

Q2. 休職中の給料はどうなりますか?

法律で一律に決まっておらず、会社の規程次第です。無給とする会社が多く、その場合は健康保険の傷病手当金(標準報酬日額の約3分の2)が生活の支えになります。

Q3. 傷病手当金はいつから、どれくらいの期間もらえますか?

連続3日の待期を経て4日目から支給対象となり、支給開始日から通算して1年6か月が上限です。2022年1月の改正で通算化されました。加入先によって細部が違う場合があります。

Q4. 休職を申し出ると評価に響きますか?

評価制度は会社ごとに違うため一概には言えません。ただ、休職の事実だけで長期的に不利になると決まっているわけではありません。評価は、復職後の就業状況や成果を含めて見られるのが一般的です。

Q5. 休職中に転職活動をしてもいいですか?

就業規則で禁止されていなければ可能な場合もありますが、まず回復を優先するのが原則です。主治医の判断と、会社の規程を確認してから検討してください。

まとめ

適応障害での休職は、受診、診断書、規程の確認、会社への申し出、傷病手当金の準備という順番で進めると、迷いが減ります。決め手は気力ではなく、順番です。一人で全部を抱えず、規程と制度を味方にしてください。

参考文献