移住支援金を知らずに福島へ転職する人が、まだかなりいる。エージェント側の事情を明かすと、「申請できたはずの支援金を逃した」という相談は珍しくない。制度が複雑で、何がどこに申請できるのかが分かりにくいのが主な理由だ。
この記事では、2026年10月10日時点で受付中の制度を中心に、国の基本制度との違い、申請の順番、不採択になりやすい理由まで整理する。確認できた制度のみを取り上げ、推測は書かない。
国の制度と福島県の違い:2層構造を理解する
国の「地方創生移住支援金」(内閣府主導)は、東京圏から地方に移住する人への支援制度で、都道府県・市町村が共同実施している。基本額は単身60万円、世帯(2人以上)100万円、18歳未満の子ども1人あたり最大100万円加算という全国共通の上限ライン。
福島県はここにさらに独自の支援を2層乗せている。1つ目が「ふくしま移住支援金給付事業」で、国の制度を県が実施するもの。東京圏からの移住者が対象だ。2つ目が「福島県12市町村移住支援金」で、こちらは全国どこからの移住でも対象になり、金額も単身120万円・世帯200万円と大幅に高い。
12市町村とは、田村市・南相馬市・川俣町・広野町・楢葉町・富岡町・川内村・大熊町・双葉町・浪江町・葛尾村・飯舘村の12自治体。東日本大震災と原発事故で打撃を受けた地域であり、復興に向けた人材確保が制度の背景にある。だから国の制度と別枠で設けられ、金額も条件も別格になっている。
今申請できる制度(2026年10月10日時点)
①ふくしま移住支援金給付事業(東京圏から福島県全域)
移住元要件は「直近10年間で通算5年以上かつ直前1年以上、東京23区に在住または東京圏から東京23区内へ通勤していた」こと。就業要件は、県が運営する求人マッチングサイト「感働!ふくしま」等の掲載求人への採用、テレワーク継続、起業支援金採択などが含まれる(ふくしま移住支援金給付事業について - 福島県 2026-10-10 確認)。
- 単身移住:60万円(2026-10-10 時点)
- 2人以上の家族移住:100万円(2026-10-10 時点)
- 子育て加算:18歳未満1人あたり最大100万円(市町村により異なる)
申請は転入後1年以内に移住先の市町村窓口へ。転入後3年未満での転出は全額、3〜5年未満での転出は半額の返還義務が生じる。
②福島県12市町村移住支援金(全国から12市町村へ)
全国からの移住が対象という点が最大の特徴。東京圏縛りはない(「福島県12市町村移住支援金」募集のお知らせ - 福島県 2026-10-10 確認)。
- 単身移住:120万円(2026-10-10 時点)
- 世帯移住(2人以上):200万円(2026-10-10 時点)
- 医療・介護・福祉有資格者就業加算:+120万円(対象施設での就業が要件)
- 子育て加算:転入前3年以上東京圏在住かつ18歳未満1人あたり100万円
申請は転入後3ヶ月以上1年以内に、転入先市町村を経由して提出する。①のふくしま移住支援金と②の12市町村移住支援金を同時申請できるかどうかは、市町村によって条件が異なる。転入前に必ず窓口で確認すること。
③福島県12市町村家賃補助金(2026年4月スタートの新制度)
令和8年(2026年)4月から始まった新制度で、2026年4月1日以降に12市町村に転入した人が対象。転入前3年以上対象地域外に居住していた実績と、5年以上の定住誓約、就業または起業の要件を満たすと申請できる(福島県12市町村家賃補助金 - 福島県 2026-10-10 確認)。
- 補助額:月額最大4万円(実家賃から公営住宅相当額3.5万円と住宅手当を差し引いた額)(2026-10-10 時点)
- 補助期間:最大36ヶ月(年度毎に申請必要)
- 2026年度の申請期限:2027年1月29日
郵送・持参・電子申請(未来ワークふくしまポータル経由)で申請可能。
④来てふくしま住宅取得支援事業
県外から福島県に移住し住宅を取得する人への補助。補助額は住宅取得経費の1/2で、県の上限は基本80万円+加算最大30万円(2026-10-10 時点)。加算は移住者の年齢・世帯構成・就業要件等で10万円単位となる。市町村独自補助も別途ある場合がある(来てふくしま住宅取得支援事業 - 福島県 2026-10-10 確認)。
昭和56年以前の建物は耐震診断実施が必須要件。補助対象になるかどうかは物件選定の段階から市町村に確認しておく必要がある。土地取得費・外構工事費は対象外。
⑤ふくしま移住希望者支援交通費補助金(移住検討段階から使える)
移住を「検討している」段階から使える制度。18歳以上の県外在住者が対象で、現地視察の交通費を定額補助する(ふくしま移住希望者支援交通費補助金 - 福島県 2026-10-10 確認)。
- 補助額:8,000〜26,000円程度(現住所・交通手段による定額、2026-10-10 時点)
- 2026年度分:2027年3月10日帰着分まで対象
- 年度1人1回のみ
出発の10営業日前までに現地活動計画を提出し、5営業日前までに移住推進員と面談する手順がある。手続きが多いので早めに動く必要がある。
申請の順番:「転入後1年」を起点に逆算する
市場のレートで言うと、この手の支援金を最大化するには「転入後の期限管理」が全てだ。多くの人が転入後に制度を調べ始めるが、それだと遅い。
- 移住検討段階(転入前):交通費補助(⑤)を使って現地視察。出発の10営業日前までに計画書を提出する手順がある。
- 採用・内定確定後(転入前):就職先の求人が「感働!ふくしま」等の対象マッチングサイトに掲載されているかを確認。採用後に遡って掲載を証明することはできない。転入後に気づいても手遅れになる。
- 転入直後:12市町村に転入した場合は家賃補助(③)の対象か確認(2026年度は2027年1月29日が申請期限)。住宅取得を検討しているなら市町村窓口に事前相談を入れる。
- 転入後3ヶ月〜1年以内:移住支援金(①または②)を申請。12市町村移住支援金(②)は「転入後3ヶ月以上1年以内」が申請ウィンドウ。転入直後から準備を進め、3ヶ月経ったら申請する。
住宅取得支援(④)と移住支援金(①②)を並行申請できるかどうかは市町村によって扱いが違う。必ず転入前に市町村窓口で確認すること。
よくある不採択の理由
- 就職先の求人が対象マッチングサイト未掲載:不採択の最多理由。「感働!ふくしま」等に掲載されていない求人への就職は支援金対象外になる。採用前に確認しておかないと、要件を満たしても支援金は受けられない。
- 東京23区の在住・通勤歴が5年未満:「10年間で通算5年以上かつ直前1年以上」という要件は厳密。「あと数ヶ月で5年だった」は適用外。
- 転入後1年を超えての申請:制度を後から知って申請しようとしたら期限が切れていた、というケースが多い。転入後はすぐに移住先市町村の窓口に相談するのが正解。
- テレワーク継続の証明書類が不足:テレワーク継続要件で申請する場合、雇用契約の継続と業務継続を証明する書類が必要。具体的な書類要件は市町村によって異なる。
過去の制度(次年度の見通しに役立てる参考として)
早期再就職支援等助成金(UIJターンコース)は令和7年度(2025年度)末をもって終了した(早期再就職支援等助成金(UIJターンコース) - 厚生労働省 2026-10-10 確認)。企業側(採用事業主)への助成金で、UIJターンで採用した人材の採用活動費の1/2〜1/3(上限100万円)を補助していた制度。令和8年度以降の継続は発表されていない(2026-10-10 時点)。後継制度の動向は厚生労働省の公式ページで確認することを勧める。
問い合わせ先
- ふくしま移住支援金全般:福島県企画調整部ふくしまぐらし推進課(電話:024-521-8023、E-mail:ui-turn@pref.fukushima.lg.jp)
ふくしまぐらし推進課 - 福島県 - 12市町村関連(移住支援金・家賃補助金):福島県避難地域復興課(電話:024-521-8439)
避難地域復興課 - 福島県
FAQ
東京圏以外から移住しても支援金は受けられますか?
12市町村への移住であれば、全国どこからでも「福島県12市町村移住支援金」(単身120万円・世帯200万円)の対象になる。ただし「ふくしま移住支援金給付事業」は東京圏からの移住が要件のため、そちらは使えない。
移住支援金と12市町村移住支援金は同時にもらえますか?
2026年10月時点では、どちらを適用するかは申請先市町村との確認が必要。制度によっては一方を受けると他方の対象外になるケースがある。転入前に移住先の市町村窓口に必ず確認すること。
内定が出ていない段階から相談できますか?
移住前の相談は各市町村窓口で受け付けている。東京・有楽町の「ふくしまぐらし。相談センター」でも事前相談が可能。移住支援金の対象求人かどうかは採用前に確認できるため、内定前から動き始めた方が選択肢が広い。
リモートワークを続けながら福島に移住した場合は?
テレワーク継続要件で申請できる場合がある。雇用元との雇用契約の継続と業務継続の証明書類が必要になる。具体的な証明方法は市町村によって異なるため、転入前に確認すること。
返還義務が発生するのはどんなケースですか?
転入後3年未満で転出した場合は全額、3〜5年未満での転出は半額の返還義務が発生する(ふくしま移住支援金の場合)。やむを得ない事情がある場合は市町村に事前相談を。
参考文献
- ふくしま移住支援金給付事業について — 福島県(2026-10-10 確認)
- 「福島県12市町村移住支援金」募集のお知らせ — 福島県(2026-10-10 確認)
- 福島県12市町村家賃補助金 — 福島県(2026-10-10 確認)
- 来てふくしま住宅取得支援事業 — 福島県(2026-10-10 確認)
- ふくしま移住希望者支援交通費補助金 — 福島県(2026-10-10 確認)
- 地方創生移住支援金の解説 — 内閣府(2026-10-10 確認)
- 早期再就職支援等助成金(UIJターンコース) — 厚生労働省(2026-10-10 確認)






