栃木県に移住して働くなら、まず知っておきたいのは「県が独自に用意した大型の支援金があるわけではない」という点だ。使える金額の大半は、国の移住支援金を県と市町が一緒に出す形で、申請先は移住先の市町になる。
この記事では、2026-10-24 時点で公式ページを開いて確認できた制度だけを書く。確認できなかったものは書いていない。UIJターン就職の個別支援や資格取得支援については、県・市町の公式ページで裏が取れなかったため、今回は扱っていない。
国の制度と栃木県の違い:独自なのはどこか
国の移住支援金は、東京23区に住んでいる人、または東京圏から23区へ通勤していた人が、東京圏外へ移住して就業や起業をしたときに出る。上限は単身60万円以内、世帯100万円以内。18歳未満の世帯員を連れて移住する場合は、1人につき最大100万円が加算される(移住支援金 - 地方創生 2026-10-24 確認)。
栃木県はこの枠組みに乗っている。県の案内では、単身60万円、世帯100万円、18歳未満の帯同者がいる世帯は子育て加算として基本「100万円×子どもの人数」(市町により異なる)となっている(栃木県の移住支援事業 2026-10-24 時点)。つまり金額は国の上限いっぱいだ。
では県独自の部分はどこか。確認できたのは次の3つ。
- 求人の入り口が県のマッチングサイトに限られる。県が運営する企業情報掲載サイト「WORKWORKとちぎ」に載った求人が、就職型の対象になる(とちぎWORKWORK就職促進プロジェクト事業 2026-10-24 確認)
- 起業型の入り口が県の補助金。「地域課題解決型創業支援補助金」の交付決定が条件になる
- 子育て加算や独自要件は市町ごとに違う。県のページ自体が「市町により異なる」と書いている
県ページの更新日表示は2020年4月1日のままだが、中身には2023年や2025年の要綱も含まれている。表示が古いので、受付状況は必ず移住先の市町に聞くこと。県の移住定住促進担当は人口未来課(028-623-2233)だ。
いま申請できる制度(2026-10-24 時点)
① 移住支援金(足利市の例:2026年度受付中)
足利市は2026年度の受付中として案内している。世帯100万円、単身60万円、18歳未満の子ども1人につき100万円加算(2026-10-24 時点)。予算がなくなり次第、受付終了となる。2026年度の期限は2027年1月31日の見込みで、さらに転入日から1年という個人ごとの期限がある。2026年2〜3月に転入した人は、この個人期限のほうが先に来る(移住支援金のお知らせ - 足利市 2026-10-24 確認、ページ更新日 2026-07-02)。
② 移住支援補助金(那須町の例:令和8年度)
那須町は令和8年度分を案内している。金額は単身60万円、世帯100万円、世帯で移住する場合の18歳未満1人につき100万円加算(2026-10-24 時点)。要件の骨格は国と同じで、移住前10年のうち通算5年以上の東京23区在住・通勤、直前1年以上の連続、そして申請日から5年以上住み続ける意思が求められる。
就業型は、県のマッチングサイト掲載求人で、週20時間以上の無期雇用、申請時に連続3か月以上在職、という条件がつく。テレワーク型は、那須町での勤務が出勤日の4/5以上かつ週20時間以上。関係人口型は申請時40歳未満で山村振興指定地域に転入し就業していることが必要だ。
ページには受付中・終了の表示がなく、予算は「限りがある」とだけ書かれている。令和8年10月以降の転入は早めに相談するよう案内されている(那須町移住支援補助金について(令和8年度) 2026-10-24 確認、ページ更新日 2026-05-28)。
③ 就職移住者支援金(足利市:2026年8月1日から受付)
国の移住支援金とは別の、足利市独自の枠。2026年2月1日以降に足利市へ移住し、市のパートナー企業で正社員として働く人が対象で、移住日か就職日の遅いほうの時点で35歳未満であること、市税の滞納がないことなどが条件になる。
基本額は3万円。就業先から移転費や就職祝い金などの一時金が出ている場合は同額を加算(上限1万円)、女性の申請者は2万円が加算される(2026-10-24 時点)。申請できるのは、移住日と就職日の遅いほうから6か月経過した翌日から1年間。4月1日に就職した人なら2026年10月1日から2027年3月31日までだ。予算に達すれば終了する(就職移住者支援金 - 足利市 2026-10-24 確認)。
④ 住宅取得の補助(栃木市・那須町)
栃木市の「とちぎで暮らそIJU支援補助金」は、2026年4月1日から2029年3月31日までの契約で取得した市内の住宅が対象の新制度に切り替わっている。基本額は新築・購入30万円(市街化調整区域は20万円)、中古購入10万円。子どもがいる世帯の加算と、県外からのUターン加算は各5万円(2026-10-24 時点)。
要件は、転入直前に連続1年以上市外に住所があり、転入後2年以内に対象住宅を取得していること、5年以上の定住の誓約、自治会加入など。申請期限は2030年3月31日で、申請先は地域政策課(0282-21-2453)だ(とちぎで暮らそIJU支援補助金(令和8年度〜)- 栃木市 2026-10-24 確認、ページ更新日 2026-04-01)。
那須町の「移住定住促進住宅取得等補助金」は、住宅の購入が基本30万円(増築・改修は20万円)、町内業者で建てた場合などに加算があり、上限は50万円。申請者は45歳未満(増築・改修は世帯員に45歳未満がいればよい)で、5年以上の居住が条件。申請は改修完了または登記から6か月以内。別の町の補助金で賄った費用は対象外と書かれている(那須町移住定住促進住宅取得等補助金について 2026-10-24 確認、ページ更新日 2026-05-27)。
⑤ 東京への通勤を続ける人向け(栃木市)
栃木市は「東京都通勤者支援補助金」を令和8年度受付開始としている。東武線の特急券か新幹線の定期券で東京へ通勤する人に、月額最大1万円。2026年度からは申請月から連続36か月が上限になる(栃木市東京都通勤者支援補助金 2026-10-24 確認)。転職せずに栃木へ移る人向けの制度で、移住支援金との併用可否はページに書かれていない。
申請の順番:先に取ると他が取れなくなるもの
順番で一番大事なのは、時間軸だ。市町の窓口が言う順序を並べるとこうなる。
- 要件に当てはまるか、転入前に移住先の市町へ事前相談する(那須町は事前相談を明記、県も事前相談を案内)
- 住民票を移住先の市町へ移す(転入)
- 就業・テレワーク・起業などの要件を満たす。就職型なら連続3か月以上の在職が申請時に必要(那須町のページより)
- 那須町の場合、転入から3か月以上経過してから申請。転入から1年を超えると申請資格がなくなる
- 市町の窓口に申請書を出す
併用の落とし穴は2つ確認できた。
1つ目は足利市。就職移住者支援金は「移住支援金または地方就職支援金を受給していないこと」が要件に入っている。東京圏からの移住で国の移住支援金の要件を満たすなら、その受給が先になり、就職移住者支援金は対象から外れる。額は60万円や100万円と3万円で大きく違うので、普通は移住支援金を優先することになる。
2つ目は那須町の住宅取得補助。別の町の補助金で賄った費用は対象外という条件がある。同じ費用に二重で出さないという意味だ。
それ以外の組み合わせ、たとえば移住支援金と住宅補助、移住支援金と栃木市の通勤補助は、県や市町のページに併用の可否が書かれていない。書かれていないものは「併用できる」とも「できない」とも言えない。申請前に窓口へ電話して、回答をメモしておくのが確実だ。
よくある不採択・失敗の理由
公式ページから読み取れる、つまずきやすい点をまとめる。
- 求人が対象外。県のマッチングサイトに載っていない求人は就職型の対象にならない。内定を承諾する前に、その求人が対象として掲載されているか確認する
- 期限切れ。転入から1年を過ぎると申請資格が消える。起業型は交付決定から1年
- 在職期間が足りない。就職型は申請時点で連続3か月以上の在職が必要。入社直後に申請しても通らない
- 3親等以内の親族が経営する法人や、転勤・出向による異動は就業要件を満たさない(県・那須町のページより)
- 予算上限。足利市は予算に達し次第終了、那須町も「予算に限りがある」と明記している
- 返還。虚偽申請、申請日から3年未満の転出、要件を満たす職を1年以内に辞めた場合は全額返還。3年以上5年以内の転出は半額返還だ。倒産や病気などやむを得ない事情なら、市町に相談できる
なお、那須町は移住支援金が所得税法上の一時所得にあたり確定申告が必要と書いている。取り扱いは税務署に確認してほしい。
過去の制度(募集終了・次年度の見通しの材料)
地域課題解決型創業支援補助金(2026年度は募集終了)。補助上限200万円、補助率2分の1以内。2026年度は1次が4月2日から30日、2次が6月17日から7月9日だった。県のページは「令和8(2026)年度の募集は終了しました」と書き、次回の公募の有無には触れていない。移住して創業する人が移住支援金の起業型を使うための入り口なので、2027年度も同じ流れなら、春の1次募集が最初の目安になるが、これは今年の実績からの推測で、県は予告していない。問い合わせは栃木県産業振興センター(028-670-2607)だ(地域課題解決型創業支援補助金 - 栃木県 2026-10-24 確認、ページ更新日 2026-06-16)。
栃木市とちぎで暮らそIJU支援補助金(2023年4月1日〜2026年3月31日契約分)。契約日がこの期間内の人は、申請期限が2027年3月31日。金額は新制度と同じ新築30万円・中古10万円が基本で、加算は各5万円(とちぎで暮らそIJU支援補助金(令和5〜8年契約分)- 栃木市 2026-10-24 確認)。
FAQ
栃木県の移住支援金は、県庁に申請するのですか?
いいえ。申請は移住先の市町役場です。県のページにも、申請は市町で行い、事前相談をするよう書かれています。県の窓口は人口未来課(028-623-2233)です。
東京以外から栃木県に移住した場合は、何も使えませんか?
国の移住支援金は東京23区在住・通勤が前提なので対象外です。ただし市町独自の制度は別枠です。栃木市の住宅補助は転入前の住所が市外であることを条件にしていて、東京圏とは限定していません。各制度の要件は窓口で確認してください。
テレワークで移住した場合も対象ですか?
対象になりえます。県のページには、週20時間以上のテレワークによる移住が就業の類型として載っています。那須町は、勤務が出勤日の4/5以上であることなど細かい条件も示しています。
資格取得の支援や、UIJターン向けの就職支援はありますか?
今回は県・市町の公式ページで確認できた制度がなかったため、この記事では扱っていません。あるともないとも言えない状態です。移住先の市町の移住定住担当に聞くのが早いです。
参考文献
- 移住支援金 - 地方創生 (2026-10-24 確認)
- 栃木県の移住支援事業 (2026-10-24 確認)
- とちぎWORKWORK就職促進プロジェクト事業 (2026-10-24 確認)
- 地域課題解決型創業支援補助金 (2026-10-24 確認)
- 足利市 移住支援金のお知らせ (2026-10-24 確認)
- 足利市 就職移住者支援金 (2026-10-24 確認)
- 那須町移住支援補助金について(令和8年度) (2026-10-24 確認)
- 那須町移住定住促進住宅取得等補助金について (2026-10-24 確認)
- 栃木市 とちぎで暮らそIJU支援補助金(令和8年度〜) (2026-10-24 確認)
- 栃木市 とちぎで暮らそIJU支援補助金(令和5〜8年契約分) (2026-10-24 確認)
- 栃木市東京都通勤者支援補助金 (2026-10-24 確認)
問い合わせ先
- 栃木県 人口未来課 移住定住促進担当:028-623-2233(移住支援事業ページ)
- 栃木県 労働政策課(WORKWORK事業):028-623-3224
- 足利市 地域創生課 移住・定住担当:0284-20-2261
- 那須町 ふるさと定住課 リビングシフト推進室 事業推進係:0287-72-6955
- 栃木市 地域政策課 移住定住促進係:0282-21-2453






